初代は72年発売。当時のワールドボーイシリーズの最高価格モデルで、後継のGXOの発売後も73年にトランシーバー機能を追加したモデルが最上位モデルとしてカタログに載って居ました。この個体はその前期型です。 今見ても精悍で美しいボックスタイプのデザインです。トップパネルにスイッチ類、ボリューム、トーンノブ、バンド切替ボタンを配し、前面には潔くチューニングノブとタイマーのツマミしかありません。この後ナショナルからは類似のデザインは出ず、小生記憶する限り他社からも類似の物は出ませんでした。 このデザインを採用した理由は密閉度を高めつつ整備性を上げるためと思われ、ボックス型のボディーの中のスピーカーを含めた電子基板一式が底面と側面のネジを外し、前面のノブを外すだけですっぽりと上部から引き抜けます。 外観上、電池ボックス以外の何処にも埃が侵入出来る部分が無く、結果として販売されて50年近く経過しても内部には大きなダメージが無いのがこのラジオの大きな美点の一つです。但し、プッシュボタン式のバンド切替の接触不良で動かない個体が多い様です。 ボックス構造と基盤を金属部品でガッチリ固定してある為余計な振動、ビビリが出ません。 スピーカーは10cmのアルニコ型、磁気回路は後継モデルのGXOが更に強力ですが、それ以外との比較ではクラス最強の一つです。出力は2.2Wでこれも後継モデルのGXOには数値的に劣りますが4オームとインピーダンスが低い為実際の音量では負けて居ません。但し個人の主観ではTXが更に鮮明な音です。 FM、AMの受信感度もずっと後のトップ機種に勝るとも劣りません。 唯一の欠点は当時の限られた技術と素子で最高性能を狙った結果、ポータブルとしては大きく重くなり過ぎた事でしょうか。実際単二電池5本！を加えると2kg弱と言う重さで、これは重量級のチャンピオンの吠えろクーガの次です。 この個体は此処で取り上げる12台目の完動品です。 入手時点では汚れが酷く、ボリューム類のガリも相当でした。スピーカーグリルのキズ、サビ、塗料の剥離もあったのでグリル部分には艶消しブラックを吹いています。整備後は機能的な物、音質には全く問題有りません。ACコード付。尚、前回故あってキャンセルさせて頂いた方(お名前を失念してしまいました)には前回同様の価格でお出しします。但し売れてしまった場合はご容赦下さい。